有機化合物は炭素を基本とした化合物群で、炭素同士や他の原子との結合の仕方によって多様な性質を生み出します。
この章では、有機化合物の構造と構造を作るための化学結合の概念について説明していきます。
化学結合を知ることは、有機化合物の物性や化学反応を理解する上での基礎となります。敬遠しがちですが、しっかり学んでいきましょう。
共有結合と構造式
有機化合物を形作るのは原子と原子の共有結合です。
まず、共有結合について基本から学んでいきましょう。
共有結合
すべての物質は原子核と電子からなる原子からできています。
原子核は正電荷(+)を、電子は負電荷(-)を帯びた粒子です。
原子核と原子核の間に電子を共有することでできる結合が共有結合です。
共有結合を作るときには不対電子2つから電子対を作ります。
結合に使う電子対の数は、結合の状態を表し、
電子2つ(電子対1つ)でできる結合を単結合
電子4つ(電子対2つ)でできる結合を二重結合
電子6つ(電子対3つ)でできる結合を三重結合
とそれぞれ呼びます。これは結合の性質を決める重要な要素です。
なお、この結合中の電子対の数を結合次数と呼びます。
(単結合では結合次数1、二重結合は結合次数2)
ちなみに、結合を作らない電子対、つまり一方の原子が独占している電子対を非共有電子対(lone pair)と呼びます。
非共有電子対は電子2個からなるので負電荷を帯びています。

炭素原子は最外殻の電子(=価電子)を4個、窒素原子は5個、酸素原子は6個持っています。
最外殻の電子が8個になると、安定になるため(オクテット則)、炭素原子では不対電子を4つ、窒素原子では3つ、酸素原子では2つ引き受けることができます。
この電子の数の分だけ結合を作ることができ、この数字は原子価と呼ばれます。
有機化合物を表す3つの構造式
有機化合物は構造式でその分子の形が表現されます。
ここでは、有機化合物を表す構造式の種類を見ていきましょう。
Lewis構造式(ルイス構造式)
各原子の価電子を省略せず、電子を点で表した構造式です。

原子間の点が
2個の場合は単結合
4個の場合は二重結合
6個の場合は三重結合を表します。
また、非共有電子対は原子間にない2つの点で表記されます。
最も基本的な構造式ですが、分子が大きくなると書くのが難しくなります。
そこで、この構造式を基本として省略した構造式がよく用いられます。
ケクレ構造式
Lewis構造式の結合の部分を線で置き換えた構造式です。

二重結合は2本線で、三重結合は3本線で表記します。
非共有電子対はそのまま2個の点で表されますが省略することも可能です。
後述しますが、二重結合を作っている原子からは約120°の角度で結合を書き、
三重結合の場合は180°(一直線)になるように書きます。
骨格構造式
医薬品や天然物などの複雑な分子を表現する場合、ケクレ構造式でもまだ書くのが大変です。
そこで、有機化学の世界ではケクレ構造式の炭素原子を省略して線で表した骨格構造式が最もよく用いられます。

骨格構造式でも非共有電子対を省略することがあります。
また、明確に水素や炭素を示したい場合は書いても構いません。
ケクレ構造式のときと同様に、結合次数によって適切な角度で書きます。
いくつか書く練習をすると骨格構造式が速くかけて便利なことに気づくはずです。
次の分子の
a.Lewis構造式 b. ケクレ構造式 c. 骨格構造式
を示せ。
①エタン(C2H6)
②アセチレン(C2H2)
③ベンゼン(C6H6)
原子軌道
共有結合をより深く知るためには分子軌道という概念を理解する必要があります。
そこで分子軌道の前に、まずは原子軌道について学んでいきましょう。
電子は原子核よりもかなり軽いので、速く動くことができます。
このため、結合の形成は電子が先に動いてから、それに引きずられて原子核が動くという順番で起こります。
よって、化学結合や化学反応を考える際、電子の振る舞いを決める原子軌道が重要になってきます。
原子軌道とシュレディンガー方程式
電子は粒子でありながら、波動性を持っています。
この波動性を表現した数式がシュレディンガー方程式です。
この方程式を解くと、電子が持つエネルギー(E)とそのエネルギーをとる際の波動関数(ψ)が得られます。
この原子の周りの電子についての波動関数を原子軌道と呼びます。
原子軌道は電子が存在できる場所を表します。
具体的には、原子軌道の二乗は、その場所に電子が存在できる確率を表します。
感覚的な理解としては、軌道の形に合わせて電子が入っているという理解で十分です。
また、原子軌道には符号があります。
二乗した際に符号の情報はなくなりますので、それだけでは電子の存在確率には影響を与えません。
しかし、複数の原子軌道を重ねる際、符号が合う同士は強め合い、符号が逆同士は弱め合うという現象が起こります。
このあたりは波の重ね合わせと似ていますね。
量子数と軌道の名前
シュレディンガー方程式を解いて波動関数を求める際、波動関数を定義するために3つの定数が出現します。この定数は量子数と呼ばれていて、それぞれ軌道の形や性質を決定する重要な定数です。
主量子数n
このnにより軌道を殻に分けることができます。
n = 1であればK殻、n = 2であればL殻となります。
つまり、軌道の大きさを表す量子数です。
nは1以上の整数の値をとり、他の量子数の取りうる範囲を決めます。
方位量子数l
電子が動く際の角運動量を決める量子数。角運動量を決めるといってもわかりにくいかもしれないので、軌道の形を決める量子数と考えるとよいです。
方位量子数の取りうる範囲は主量子数によって決まり、
l = 0, 1, 2, … n – 1
となります。
有機化学では軌道の名前をつける際、方位量子数の小さい順に
s, p, d, f
という名前を使用します。
例えば、n = 1, l = 0の軌道の名前は「1s軌道」となります。
磁気量子数ml
軌道がどのような位置にあるのかを決める量子数です。
磁気量子数mlは方位量子数lの値によって範囲が以下のように決まります。
ml = –l, -(l – 1), … l -1, l
n = 2, l = 1である2p軌道について考えてみましょう。
2p軌道でmlがとる範囲は-1, 0, 1の3通りです。
これはp軌道には
x軸方向に向いたpx軌道
y軸方向に向いたpy軌道
z軸方向に向いたpz軌道
の3つがあることを示しています。
p軌道の場合は同じ形の軌道の向きが変わるだけですが、
d軌道以降は軌道の形にも影響を与えます。
量子数と軌道の名前を表にまとめておきます。
主量子数(n) | 方位量子数(lの範囲 | 軌道の名前 |
---|---|---|
1 | 0 | 1s |
2 | 0, 1 | 2s (l = 0), 2p (l = 1) |
3 | 0, 1, 2 | 3s (l = 0), 3p (l = 1), 3d (l = 2) |
もう一つの量子数:スピン量子数ms
原子軌道は以上の3つの量子数で決まりますが、有機化学を理解する上でもう一つ重要な量子数にスピン量子数msがあります。
スピン量子数は電子の自転に関する量子数で+1/2か-1/2の値をとります。
符号が逆の2種類しかないので、よく上向き矢印と下向き矢印で表現されます。(このブログでも上向き、下向きで説明します。)
この量子数をあわせた4つの量子数で、原子や分子の性質が理解できます。
軌道の節面
3つの量子数の組み合わせで決まる原子軌道は、量子数によって異なる形を持ちます。
特に重要なのが、値が0となる節面です。
波動関数の二乗が電子の存在確率に比例するので、ある原子軌道に電子が入っている場合でも、節面においては電子の存在確率は0、つまり電子は存在しないことになります。
有機化学ではs軌道とp軌道の形をよく理解しておく必要があります。

s軌道は外から見て球形の軌道ですが、p軌道は球が上下に重なったような形の軌道で、間には節面があります。
節面を境界にして、上下で符号が逆になっていることにも注目です。
p軌道よりも節面が増えた軌道がd軌道です。
詳しくは述べませんが、d軌道についても軌道の形は示しておきます。d軌道も節面の場所と軌道の符号の変化に注意してみるとよいでしょう。
軌道の量子数とエネルギー準位
3つの量子数の組み合わせで決まる原子軌道はそれぞれ固有のエネルギー準位を持ちます。
エネルギー準位は電子が原子核の無限遠方に存在するときを0とするので、必ずマイナスの値になり、エネルギー準位が低いほど電子が原子核に強く引きつけられていて安定であることを意味します。
同じ原子においては、軌道のエネルギー準位は量子数によって決まります。
エネルギーは主量子数の増加とともに大きくなります。
つまり1s軌道より2s軌道のほうがエネルギー準位が高いです。
次に方位量子数に関してですが、電子が一つのときには方位量子数によりエネルギー準位が変わることはありません。
ただ、水素を除く原子では電子が複数あるので、この法則が適用されることはほとんどありません。
複数の電子が存在すると、電子同士の反発の影響によりエネルギー準位が変化し、方位量子数が大きくなるにつれてエネルギー準位が大きくなるようになります。

一方、磁気量子数はエネルギー準位に影響を与えません。
これをまとめると軌道のエネルギー準位は以下のようになります。
1s < 2s < 2p < 3s < 3p < 4s ~ 3d < 4p …
4sと3dはエネルギー準位が近いので、元素によって順番が入れ替わります。
また、2p軌道は磁気量子数の異なる2px, 2py, 2pz軌道に分けられますが、これら3つは同じエネルギー準位です。
このように、複数の軌道が同じエネルギー準位を持つことを縮退と呼びます。
電気陰性度と軌道のエネルギー準位
これまでは、量子数とエネルギー準位の関係を見てきました。
次は、異なる元素間で同じ量子数を持つ軌道同士を比べてみましょう。
ここで注目するのが電気陰性度です。
電気陰性度は原子核が電子をどれほど強く引きつけるかを表す指標です。
電子を強く引きつけるほど、電子は安定化します。つまり、エネルギー準位が下がります。
したがって、同じ量子数の軌道を比べると、電気陰性度の大きい元素の軌道のほうがエネルギー準位が低くなります。
例えば、炭素、窒素、酸素の2p軌道のエネルギー準位を比べると
酸素 < 窒素 < 炭素
の順にエネルギー準位は大きくなっていきます。

これは後に説明する結合の分極に深く関わってきます。
構成原理・Hundの規則・Pauliの排他律
原子が持っている電子の数は原子番号と同じです。水素なら1個、炭素なら6個という具合です。
一方軌道はどの原子でも(理論的には)際限なく存在します。
しかし、電子はどの軌道でも使えるわけではありません。
電子の入り方の中で、最も安定な配置を基底状態と呼びますが、基底状態がどのような配置かは、構成原理・Hundの規則・Pauliの排他律で理解することができます。
Pauliの排他律
「ある電子の4つの量子数の組み合わせと同じ組み合わせを持つ電子は存在できない」
という原理です。4つの量子数とあるので、ここでスピン量子数が登場します。
この原理は説明の通り、異なる電子間で量子数の組み合わせは必ず違いはずだということをいっています。
構成原理
「電子が新たに1つ入るとき、空の軌道のうち最もエネルギー準位が低い軌道に電子が入る」
という原理です。

1s軌道と2s軌道のエネルギー準位は1s < 2sなので、この原理で考えると
水素(H)の電子配置は1s1
ヘリウム(He)の電子配置は1s2
リチウム(Li)の電子配置は1s22s1
となることがわかります。
Hundの規則
「縮退した軌道に電子が入っていくとき、スピン量子数が同じになるように入るほうが安定」
これは、複数の縮退した軌道に電子が入る際の原理です。
例えば3つの2p軌道に3つの電子が入るとき、構成原理を考えるとすべての2p軌道に電子が入るはずです。
その際、すべての電子のスピンは上向きか下向きに揃って入ることになります。
基底状態と励起状態
すべての物質は常に最も安定な基底状態にあるとは限りません。
基底状態よりも不安定な電子配置になっている状態を励起状態と呼びます。
基底状態から励起状態になるには、よりエネルギー準位の高い軌道に電子が移動する必要があります。
エネルギー準位は飛び飛びの値(量子化されている)になっているので、軌道間のエネルギーの差の分だけ外部からエネルギーを受け取る必要があります。
このエネルギー差(ΔE)は通常光のエネルギーに対応し、光の波長λにとプランク定数h、光速cによって以下の式で関連付けられています。
ΔE = h・c/λ
つまり、適切な波長の光を吸収して基底状態から励起状態へと電子の状態が変化します。

励起された電子は、逆に光を発したりして基底状態に戻りますが、さらに他の軌道に移動して化学反応を起こす場合もあります。
a. 硫黄原子(原子番号16)の基底状態の電子配置を図示せよ。
b. 次の図は酸素原子の電子配置を示したものである。

これは基底状態か励起状態か。
化学結合と分子軌道
話を共有結合に戻しましょう。
共有結合では電子が2つの原子の間に共有されています。
これは、2つの原子軌道が重なっているためだと考えることができます。
この原子軌道の重ね合わせとい考え方が分子軌道の初歩になります。
まず、同じ原子同士でできた分子(等核二原子分子)の分子軌道を見ていきましょう。
結合性軌道と反結合性軌道
水素原子2つからできる水素分子H2について考えます。
水素原子は電子を1つ持っていて、基底状態ではこの電子は1s軌道に入っています。
水素分子を作る際には、この1s軌道同士が重なり新しい軌道=分子軌道を作る必要があります。
ここで軌道の重ね方が2パターン出てきます。
1つ目は同じ符号(位相)の1s軌道同士を重ねるパターンで、2つ目が逆の符号の1s軌道同士を重ねるパターンです。
ここで重要なポイントは、軌道が重なる際にはこのどちらも同時に起こるということです。
つまり、1s軌道が同じ符号同士で重ねた分子軌道(σ軌道)と、逆の符号同士で重ねた分子軌道(σ*軌道)の新たに2つが形成されることになります。

元の1s軌道は重ね合わせ後には残らないので、この重ね合わせの前後で軌道の数は変化しません。
1s, 1s ⇒ σ, σ* (軌道の数は両辺とも2つ)
ここでσという記号を使いました。
これは結合の軸に対して回転対称性のある軌道を指すのに使います。
同じ符号同士で重ねたσ軌道は円2つで表現することが多いですが、実際には重ね合って横長の楕円のような軌道を作るイメージを持つとわかりやすいです。
すると、この軌道に電子が入ると2つの水素の間に電子が入ることがわかると思います。
この電子は2つの水素に”共有される”ため、結合を作る電子になります。
このように、電子が入ることによって、原子間に電子が共有されるようになる軌道を結合性軌道と呼びます。
その名の通り、この軌道は原子間に結合を作る性質のある軌道です。
もう一つのσ*軌道は符号が逆同士の重ね合わせです。
これも、逆の符号の円(通常は異なる色の円)2つで表現されます。
符号が逆の波は互いに弱め合うため、この重ね方をすると、よく重なっているところほど値が小さくなります。
原子と原子のちょうど中間は、それぞれのs軌道が完全に打ち消し合って電子が存在できない節面ができます。
すると結果的に原子間の値が小さく、それとは反対向きの部分の値が大きい外側に広がった軌道ができるイメージがつくと思います。
この軌道に電子が入ると、電子の存在確率は外側が多く、原子間に共有される電子はほとんどありません。
このため、この軌道に入った電子は結合を作る役割を果たさず、かえって結合を弱めるような性質をもつことになります(外側に電子があるということは結合が切れているということ)。
このように、電子が入ることによって結合を弱める性質を持った軌道を反結合性軌道と呼びます。
反結合性軌道であることを明示するために*の記号をつけるのが一般的で、σ軌道と同じ対称性の反結合性軌道はσ*軌道となります。
軌道は必ずしも結合性か反結合性かに分類できるわけではありません。
水素分子の例では、新しい分子軌道は2つの原子間のみに広がっていました。
もっと複雑な分子軌道の場合、3つ以上の原子に広がるものも出てきます。
この場合、ある原子間においては結合性、他の原子間においては反結合性となる場合も多いです。
結合性か反結合性かどうかは、あくまである2原子間の結合に着目したものであることに注意しましょう。
少し話がそれてしまいましたが、水素分子の話に戻します。
軌道の重ね合わせ方は結合性・反結合性以外に、エネルギー準位にも影響を与えます。
同じ符号同士で重ね合わせると、軌道が安定化するのに対し、逆の符号で重ね合わせると不安定化します。
これは同じ符号がよく重なるほどエネルギーが安定化するためです。

ちなみに、この安定化エネルギーと不安定化エネルギーの絶対値は不安定化エネルギーの方が若干大きくなっています。
水素原子2つは合わせて電子を2つ持っています。
1s軌道を重ね合わせたので、2つの1s軌道はなくなり、1s軌道よりエネルギー準位の低いσ軌道と、1s軌道よりエネルギー準位の高いσ*軌道の2つの軌道に対し、この2つの電子が道入っていくかを考えます。
構成原理とPauliの排他律から、2つの電子はスピンを逆向きにして、よりエネルギー準位の低いσ軌道に入ることになります。
これは、水素原子の持つ電子が電子対を作って原子間に共有されることを意味します。
同様にヘリウム分子He2を考えてみます。
この場合、2つの1s軌道からσ軌道とσ*軌道ができることは同じですが、電子は合計4つあります。

すると、σ軌道とσ*軌道の両方に電子が入ることになりますが、このときのエネルギーはどうなるでしょうか。
先に述べたように、安定化エネルギーと不安定化エネルギーの絶対値は不安定化エネルギーの方が若干大きくなっているので、σ軌道とσ*軌道の両方に電子が入ると、1s軌道に電子が入っていたときよりもエネルギーが大きく不安定になります。
結局、この場合は結合を作るよりも、原子のままいる方が安定になり、ヘリウムは単原子分子として振る舞う事になります。
エネルギー的に不安定であると説明しましたが、「反結合性軌道に電子が入ることで、結合性軌道によってできる結合が弱められて結果的に結合が切れる」と定性的に考えても良いです。
σ結合とπ結合
s軌道からできる結合はσ結合ですが、p軌道が結合に関与してくるとσ結合の他にπ結合という結合も形成可能です。
まず2つのp軌道の重ね合わせ方を考えてみましょう。
p軌道は2つの球が並んだような節面を持つ形の軌道です。この節面を挟んで2つの球状のローブは符号が異なっています。

このp軌道の2つのローブを通るような軸に沿って、2つのp軌道を重ね合わせると結合性のσ軌道と、反結合性のσ*軌道ができます。
s軌道のときと同様ですが、重ね合わせる前のp軌道に節面が一つ存在するので、2つのp軌道を組み合わせたσ軌道は節面が2つ、符号を逆に重ね合わせたσ*軌道は節面が1つ多い3つとなっていることに注目です。
p軌道では、2つのローブを通るような軸が並行になるように重ね合わせることもできます。
この際も2つのローブの符号が合っている重ね合わせ方と、符号が逆の重ね合わせ方が可能です。

符号が合っている結合性の軌道はπ軌道、符号が反対になっている反結合性の軌道はπ*軌道です。
π軌道に2つの電子が入っていることによって形成される結合をπ結合と呼びます。このπ結合はπ*軌道にも電子が入ると弱められ、切断されます。
このπ結合は主に多重結合の際に形成される結合です。
多重結合では、σ結合一つに加えて複数のπ結合が形成されます。
π結合が1つの場合、σ結合と合わせて2つの結合ができているので二重結合
π結合が2つの場合は三重結合です。
多重結合はπ結合、すなわち純粋なp軌道によって形成されます。
この点が次に説明する混成軌道を考えるのに役に立ちます。
σ軌道は結合の軸に対して対称です。
そのため、結合軸に対して回転しても結合は切れることなく回ることができます。

一方、π結合を回転させようとすると、90度回したところで、p結合同士の重なりが完全になくなってしまいます。
したがって、π結合は回転することができません。これは分子の形を決める重要な要素になります。
混成軌道
有機化合物は水素原子以外にも、炭素原子、酸素原子、窒素原子といったより原子番号の大きい元素で構成されています。
こうした元素を含む化学結合ではs軌道かp軌道のみで結合が形成されることだけでなく、一本の化学結合にs軌道とp軌道の両方が関与することが多々あります。
こうした場合、s軌道とp軌道だけで結合を表現することも可能ではあるのですが、とてもわかりにくくなってしまいます。
これは、有機化学を理解する上で大きな問題です。
またもう一つの問題として、不対電子の数と価電子の数が異なり、これでは等価な結合を形成できる数が説明できないことが挙げられます。
例えば、炭素原子の基底状態では1s軌道は2つの電子で占有されており、価電子は、2s軌道に入っている2つと、2つの2p軌道に1つずつの計4つです。
ここで、2s軌道は基底状態では2つの電子で占有されているので、このままでは結合を形成できる不対電子は2p軌道の2個のみです。
仮に、空のp軌道に他の電子を受け入れるとしても、2s軌道の電子対はそのまま残ってしまいます。
これでは、炭素原子が単結合を4本の等価な結合を形成できるという事実を説明できません。
このような2つの大きな問題を解決するため、s軌道とp軌道を足し合わせた混成軌道という概念を導入します。
混成軌道はエネルギー準位の異なる複数の軌道を平均して、エネルギー準位の等しい複数の軌道としたものです。
ここでは、この混成軌道についてその基本から解説します。
sp混成軌道
ある殻(主量子数)に対してs軌道は1つp軌道は3つありますが、混成軌道はs軌道に対してp軌道をいくつ足し合わせるかで異なる軌道が作られます。
s軌道に対してp軌道を1つ足し合わせたsp軌道
p軌道を2つ足し合わせたsp2軌道
p軌道を3つ足し合わせたsp3軌道
の3種類が考えられます。
spnのnに足し合わせるp軌道の数が入るようになっています。
まず、n = 1のsp混成軌道について考えていきましょう。
s軌道1つとp軌道1つの合計2つの軌道を混成すると、2つのエネルギー的に等価な軌道(sp軌道)が生成します。

sp軌道の形を図示してみます。

これは、混成前のp軌道の符号と軌道の符号はp軌道の片側で合っていますが、反対側では逆になっています。
そのため、生成するsp軌道は片側のローブが正に大きく、打ち消し合っている左側のローブが負に小さい軌道になります。
p軌道にある節面はそのまま引き継がれていることにも注目しましょう。
エネルギー準位と軌道の形は同じですが、軌道の向きは異なります。
sp軌道は2つできるので、2つがなるべく重ならないような位置関係をとります。

このような制約を満たすのは、両者が正反対を向いているときです。
つまり、2つの2sp軌道は180°の角度をなしています。
また、2つのsp軌道がはどちらも元のp軌道と平行です。
これは、混成しなかった残りの2つのp軌道と直行していることを意味します。

sp混成軌道を作る原子では、2つのsp混成軌道が生成され、2つのp軌道はそのまま残り、この計4つの軌道が結合に関与します。
p軌道が2つ残るため、このp軌道はπ結合を形成できます。
そのためsp混成は三重結合を形成している原子のように、2つのπ結合を作る原子がとる混成です。
例えばアセチレンの炭素原子はsp混成をとっていて炭素ー水素σ結合と炭素ー炭素σ結合はsp混成軌道同士の重なりによって、炭素ー炭素π結合はp軌道同士の重なりによって形成されています。

2つのsp軌道は180°をなしているので、水素ー炭素ー炭素は一直線に並んだ形をとっています。
このように、軌道の混成は分子の形を決定する非常に重要な要素となります。
また、反結合性軌道であるσ*軌道はs軌道やp軌道で説明したのと同様に、sp混成軌道を符号が逆になるように重ね合わせることによってできています。
軌道の種類が変わっても、結合性軌道と反結合性軌道の考え方は変わりません。
sp2混成軌道
次は、s軌道1つに対して2つのp軌道を足し合わせた、sp2混成軌道について説明します。

合計3つの軌道を混成するので、できるsp2軌道も3つのエネルギー準位が等しいものになります。
まず軌道の形を図示してみましょう。

sp軌道と考え方は同じで、s軌道と打ち消し合う方向はローブの大きさが小さくなり、原子核上に節面がある軌道になります。

3つのsp2軌道の向きですが、3つがなるべく重ならないような向きになるため、2つのsp2軌道が120°の角度をなす正三角形の形になります。
残った1つのp軌道はこの正三角形からなる平面に直交しています。
sp2軌道を持つ分子の代表例はエチレンです。
炭素原子の1つのsp2軌道は、もう一つの炭素原子のsp2軌道と重なり合って炭素ー炭素σ結合を形成し、残り2つのsp2軌道は水素原子の1s軌道とσ結合を形成します。

sp2軌道が正三角形の形をとっているため、この炭素原子2つと、水素原子2つは同一平面上にあります。
この平面に直交するp軌道同士が重なることでπ結合を形成します。
π結合は回転できないので、炭素と水素からなる平面はねじれることができません。
このようにsp2混成軌道は二重結合を有する原子のように、π結合を1つ形成している原子がとる混成になります。
sp3混成軌道
s軌道に対して3つすべてのp軌道を混成してできる軌道がsp3混成軌道です。

軌道の形はsp軌道やsp2軌道と同様で、節面のある、片側のローブが大きい軌道です。
s軌道1つとp軌道3つの合計4つの軌道を混成するので、sp3混成軌道は4つ生成します。
軌道の向きはこの4つのエネルギー準位が等しい軌道がなるべく重ならない向きなので、原子核を中心として、正四面体の頂点に向かうような向きになります。

つまり、それぞれのsp3混成軌道は109.5°の角度をなします。
sp3混成軌道をつくるとp軌道は残らないので、この混成をとっている場合はπ結合を作ることができません。
このため、単結合のみで結合している原子がこのsp3混成をとることになります。
代表例はメタン分子です。
メタンでは、炭素原子のsp3混成軌道が水素原子の1s軌道とσ結合を形成し、正四面体の構造をとっています。
同じく、水分子は酸素原子がsp3混成軌道をとっており、この内2つが水素原子の1s軌道と相互作用しています。
残りの2個のsp3混成軌道には酸素原子が持っている電子対が入り、非共有電子対を形成しています。
メタンとは異なり、酸素原子上にはσ結合と共有電子対という異なる電子対が存在するため、正確な正四面体にはならず、水素ー酸素ー水素の角度は104.5°と若干縮んでいます。
これは非共有電子対のほうが水素原子とのσ結合よりも電子が原子核に近く、電子対同士の電気的反発が大きいためです。
このように、sp3混成軌道をとっている原子の結合は、結合相手によって少し歪むことが多いです。
それでもおおよそ正四面体の形になっていると考えることは、分子の形をイメージするのに大いに役に立ちます。
最後に、混成軌道の種類と性質について表でまとめておきます。
混成軌道の数 | 残るp軌道の数 | 2つの混成軌道が成す角度 | 形 | 混成を取る原子の例 | |
---|---|---|---|---|---|
sp混成軌道 | 2 | 2 | 180° | 直線 | 2つのπ結合を持つ原子(三重結合等) |
sp2混成軌道 | 3 | 1 | 120° | 正三角形 | 1つのπ結合を持つ原子(二重結合等) |
sp3混成軌道 | 4 | 0 | 109.5° | 正四面体 | π結合を作らない原子(単結合) |
アレンという分子は以下の骨格構造式で表される分子です。
この分子は中央の炭素原子が2つの二重結合を共有しています。
アレンはどういう形をしているでしょうか。
中央の原子に着目すると、π結合を右の炭素と1つ、左の炭素と1つ形成しています。
2つのπ結合を作るためにはp軌道が2つ必要なので、中央の炭素はsp混成をとっています。
2つのp軌道は直交しているため、できるπ結合も下の図のように90°ねじれることになります。

多重結合の種類ではなくπ結合の数で混成を予測するほうが、三重結合を持たないアレンのような分子の形を予測するのに役に立ちます。
分子の形を予測する理論として、原子価殻電子対反発(VSEPR)理論と呼ばれる理論があります。
これは、
結合や非共有電子対を電子対として考え、それらの電子対が最も離れた位置関係になるような形になる
という理論です。
水を例に考えると、酸素ー水素σ結合2つと、非共有電子対2つの合わせて4つの電子対が酸素原子上に存在するので、この4つが最も離れる正四面体の構造を取ると予想されます。
VSEPR理論では、第2周期までの元素からなる分子は構造の予測がうまくいきますが、第三周期以上の原子がある場合ではうまく予想できない場合があり、注意が必要です。
a. アンモニア(NH3)とホルムアルデヒド(HCHO)の炭素原子の混成はどのようになっているか)。
b. メタン分子の炭素ー水素σ*軌道を1つ図示せよ。
混成軌道のエネルギー準位と軌道のs性・p性
これまで説明したように、混成軌道は、異なるエネルギー準位の軌道(s軌道とp軌道)を同じエネルギー準位の複数へと変換する考え方です。
この混成軌道のエネルギー準位はどうなっているのでしょうか。
エネルギー準位ついても、元の軌道の平均をという考え方で理解できます。
(厳密には期待値になるのですが、細かい有機化学ではこの議論は省略しても問題ありません。)
水素以外の分子では、方位量子数の増加とともに軌道のエネルギー準位は上がっていき、2p軌道の方が、2s軌道よりも高いエネルギー準位を持っています。

sp混成軌道では2p軌道と2s軌道を一つずつ混成するので、それぞれのエネルギー準位の中間あたりのエネルギー準位をとります。
sp2混成軌道では2p軌道が2つになっているので、その平均はp軌道の方に近くなります。
sp3混成軌道は混成使うp軌道の数がさらに増えるので更にp軌道のエネルギー準位に近づきます。
これをまとめると軌道のエネルギー準位は以下のようになります。
s < sp < sp2 < sp3 < p
ボラン(BH3)は電子が入っていない軌道(空軌道)を有する分子です。
このホウ素原子の混成の状態を考えます。
π結合は持っていないので、sp3混成と考えたくなるところですが、この分子は三角形の形をしています。
つまりsp2混成をとっています。
これは空軌道のエネルギー準位を考えると理解できます。
sp3混成を取る場合、空軌道もsp3混成軌道です。
エネルギー準位は軌道に電子が入ることで生じるエネルギーを示しているので、ここで生じるエネルギーはσ結合を作る6個の電子になります。
このエネルギーはsp3混成軌道3個分です。
一方、sp2混成を取る場合はsp2混成軌道3個分で、これは前者より低い値になりますね。

つまり、電子が入らない軌道はエネルギーの高いp軌道のまま残しておくほうがエネルギー的に安定になるということです。
電子が入る軌道はなるべくエネルギー準位が低く、入らない軌道は高くと理解してくとよいでしょう。
軌道のエネルギー準位はs軌道が低く、p軌道の方が高いですが、混成軌道がどの程度s軌道のエネルギー準位に近いかを表す用語として軌道のs性があります。
「sp軌道はsp2軌道よりもs性が高い」というような使い方をします。
この反対にどれだけp軌道に近いかを表す言葉が軌道のp性という言葉です。
どちらもよく使う用語なので抑えておきましょう。
これまで、spnのnには整数のみを使用してきました。
軌道のs性について精密な議論をする際は、nの値を少数点以下まで考慮する場合があります。
このnの値は結合角θを使って以下の式で関連付けられています。
1 + ncosθ = 0
θ = 120°, 109.5°のとき、
n = 2, 3
となることから、角度と軌道のs性をつなぐ式であることが伺えますね。
厳密には、この結合角は原子が成す角度ではなく、軌道同士が成す角度です。
歪んだ結合では原子同士が成す角度と軌道同士が成す角度が異なることがあるので注意しましょう。
シクロプロパンなどの歪んだσ結合はs性が下がることがこの式からわかります。
結合の分極
異なる元素との化学結合について考えます。
メタノール(CH3OH)の炭素と酸素の結合を見てみます。
π結合はなさそうなので、炭素原子、酸素原子ともにsp3混成をとっています。
したがって、σ結合は炭素原子のsp3混成軌道と酸素原子のsp3混成が相互作用することによって形成されます。
この結果生じるσ軌道とσ*軌道の軌道の形はどうなっているでしょうか。
この相互作用を図示すると、これまで説明したとおり、σ軌道はsp3混成軌道よりもエネルギー準位が低く、σ*軌道はsp3混成軌道よりもエネルギー準位が高くなります。

電気陰性度の軌道のエネルギー準位には関係があったことを思い出してみてください。
酸素原子は炭素原子よりも電気陰性度の大きい原子です。
このため、同じsp3混成軌道でも酸素原子のsp3混成の方がエネルギー準位は低くなるはずです。
するとσ軌道のエネルギー準位はどちらかといえば、酸素原子のsp3混成軌道に近いということができますね。
エネルギー準位が近いということは、性質も酸素原子のsp3混成軌道に近いということを意味しており、具体的にはこのσ結合のローブは酸素原子の方に大きく偏っています。
この軌道に電子が入ると、電子の存在確率は酸素原子に近いほうが高くなるので、電子はより酸素原子側に偏ることになります。
これを結合の分極と呼び、正電荷を帯びる側に+を書き、そこから負電荷を帯びる方向に矢印を引いて表記します。

反結合性軌道についても同じように考える事ができます。
炭素原子のsp3混成軌道に近いため、σ*軌道のローブは炭素原子の方に大きく偏っています。
電子が入っていない状態では、電子の偏りは起こらないため、この軌道により分極は生じません。
しかし、この軌道が化学反応に関与する際はよりローブの大きい炭素原子側で、軌道の相互作用が起こります。
π結合でもσ結合と同様に考えることができます。
カルボニル基(C=O)を考えると、このπ軌道は電気陰性度の大きい酸素原子の方に偏った軌道になっています。
一方π*軌道は炭素原子のローブの方が大きくなっています。
分極が極端になるとどうなるでしょうか。
例えばNaClの結合では、もはや軌道の重なりによる安定化は起こらず、塩素原子のsp3混成軌道に電子が入ることになります。
これは電子が完全に塩素原子上に存在する、つまりイオン結合であることを意味します。
分極が極端になるとイオン結合になるということは、分極は共有結合のイオン結合性を表す尺度と考えることができます。
異なる元素間の共有結合はイオン性を帯びており、これが分極として表されます。
この分極は反応を起こす引き金となる重要な概念です。
LCAO分子軌道法
これまで、分子軌道について解説してきましたが、分子軌道がs軌道やp軌道といった原子軌道の重ね合わせで説明されていたことに気づいたのではないでしょうか。
この分子軌道を原子軌道から作る方法をLCAO (Linear Combination of Atomic Orbitals)法といいます。
正しくは
分子軌道(MO)を原子軌道(AO)の線形結合により記述する方法
です。
これまでの説明もこのLCAO法に基づいていました。
より複雑な分子軌道に対応できるよう、このLCAO法についてもう少し踏み込んでみましょう。
原子AとBからなる分子Cの分子軌道ψを原子Aの原子軌道φAと原子Bの原子軌道φBの線形結合で表現してみます。
φAとφBはこれまでの説明通り、2通りの重ね合わせができますが、これは線形結合では+か−で表現されます。


分子軌道は結合性軌道のψ1と反結合性軌道のψ2の2種類ができるので、以下のような数式で表すことができます。
ψ1 = cA1φA + cB1φB
ψ2 = cA2φA – cB2φB
+は符号が合うような重ね合わせ方、-は符号が逆になるような重ね合わせ方であることを示しています。
この数式にはcA1、cA2、cB1、cB2という4つの定数が入っています。
これは軌道係数と呼ばれる定数で1以下の正の値をとり、もともとの軌道のうちどれだけの割合が新しい軌道に使われているかを示す値です。
これまで、ローブの大きさと説明してきたのは、実はこの軌道係数のことになります。
この例ではφAのうちcA1の割合はψ1に使い、cA2の割合はψ2に使っているということになります。
一般化すると
c1 + c2 + … + cn = 1 …(式1)
が成り立ちます。
φA とφBはどちらも電子を2個ずつ収容可能な軌道です。
これが組み合わさった分子軌道ψ1とψ2も電子を2個ずつ収容できます。
このことから、ψ1とψ2はどちらも2電子収容できるだけ、原子軌道を足し合わせる必要があります。
これは数式上
cA1 + cB1 = 1
で表されます。
もし
cA1 + cB1 = 2
なら、できる軌道は電子を2倍の4個収容できることになってしまいます。
一般化すると
cA + cB … + cN = 1…(式2)
となります。
式1は軌道係数を縦方向に、式2は横方向に足してどちらも1になることを示しています。
数式を使っての説明で難しいかもしれませんが、式1, 2は軌道の分極を考える際に役に立ちます。

軌道係数はローブの大きさを表すので、cA1とcB1の大きさを比較すればψ1のローブの大きさが、cA2とcB2の大きさを比較すればψ2のローブの大きさがそれぞれわかるはずです。
仮にcA1>cB1なのであれば、結合性軌道ψ1の結合は原子Aの方に偏り、分極していることになります。
ここで、式1, 2の関係から、反結合性軌道ψ2では必ずcB2>cA2が成立します。
これは、反結合性軌道では反対に原子Bの方のローブが大きくなっていることを示します。
電気陰性度から予想される軌道の分極と、軌道係数の数式を利用すれば、反結合性軌道の形をある程度予想することが可能になるわけです。
また、数式の一般化で触れたように、線形結合できる原子数には制限はありません。
実際の分子では、多数の原子軌道が結合して、分子軌道は分子全体に広がっています。
複雑な分子軌道を理解するためにも、まずは単純な2原子の分子軌道をLCAO法で理解できるようになっている必要がありますね。
a. メチルアミンのC-N結合に関して、それぞれの原子の混成軌道から結合性軌道と反結合性軌道ができる相互作用を図示せよ。エネルギー準位の序列に注意すること。
b. シクロペンタンとシクロプロパンの炭素-炭素σ結合について軌道のs性が大きいのはどちらか。
終わりに
分子軌道は分子の構造や反応性といった性質を決める重要な概念です。
量子数の異なる複数の原子軌道は、混成軌道を作ったり、その線形結合によって分子軌道を形成したりできます。
有機化学でよく利用される骨格構造式では、こうした分子軌道の概念によって予想される分子の形をある程度表現することが可能です。
この記事で紹介した内容は有機化学を学ぶ上での最も基本的な概念です。
この内容を理解することで、有機化合物の反応についても理解が深まるはずです。
次の記事では、この内容を踏まえて有機化学の反応について話を進めて行く予定です。