ニトリルは加水分解によりアミドやカルボン酸へ変換できる有用な官能基ですが、アミンへと変換することも可能です。
最近ニトリルをアミンに還元する反応を検討していたため、この目的で使用できる反応条件をまとめておきます。
水素化アルミニウムリチウム
教科書でも書いてある還元条件です。
THF中で加熱することによりアミンへと還元することができますが、官能基許容性が低いのが問題です。
DIBALを用いた場合はアルデヒドに変換できるため、ヒドリド還元による方法は複数抑えておくと幅が広がります。
ボラン還元
BH3-THF錯体やBH3-Me2S錯体(2 equiv.)をTHF中で作用させます。
加熱が必要になることも多いですが、うまくいく基質ではスムーズに反応が進行します。
反応終了後はMeOH等でクエンチして溶媒を留去します。
ニトロ基やエステル程度の官能基であればこの反応条件に耐えてニトリルを選択的に還元することができます。
生成物とホウ素が安定な複合体を組んでしまうことがあるのがデメリットで、このような場合は酸や塩基で処理する必要があります。
ホウ化ニッケル
NiCl2・6H2OとNaBH4を用いて反応系中でホウ化ニッケルを生成させる反応条件です。
ニトリルやアルキンのような三重結合や、ニトロ基に対して優れた還元性を示します。
具体的な実験操作は以下の通りです。
基質とNiCl2・6H2O(1 equiv.)をメタノールに溶解し、氷冷化NaBH4(3 equiv.)を加えて室温に昇温します。
基質と塩化ニッケル存在下にNaBH4を加えるのがポイントです。
反応終了後はジエチレントリアミン[111-40-0]でクエンチして分液操作により精製を行います。
反応が遅い場合はNaBH4が潰れてしまうので、追加で加えれば反応が進みます。
反応は速く進むことが多いので、ニトロ基やアルキンが基質にない場合は第一選択としてもよい優れた反応だと思います。
NaBH4 + TFA
NaBH4とTFAからNaBH3(CF3CO2)を発生させる反応条件です。
反応は数時間から1日程度かかることも多いですが、ニトロ基等の他の条件では還元されうる官能基が存在していてもニトリル選択的に反応が進行します。
実験操作を紹介しておきます。
THFにNaBH4(5 equiv.)を加え、室温下トリフルオロ酢酸(5 equiv.)を加えて10分程度撹拌します。
ここにTHFに溶解した基質を加えます。
発泡するため、スケールが大きい場合は注意が必要です。
反応終了後は水か飽和重曹水を加えて過剰の還元剤をクエンチし、分液操作による精製を行います。
反応が途中で止まり原料回収することも多いですが、そのような場合は試薬の当量を増やしましょう。
操作は少々煩雑ですが、官能基選択性がよく、立体的に混み合っているニトリルでもうまく反応が進行します。
TFAを使いますが、アセタール程度の保護基であれば分解することなく使用できるのもおすすめできるポイントです。
まとめ
アミンの合成は還元的アミノ化・Gabrielアミン合成・福山アミン合成など多くの方法がありますが、ニトリルを用いると1炭素増炭しながらアミンを合成することができます。
比較的還元に強い官能基ですが、適切な反応条件を選ぶことでアミンへの還元を行うことができるので、抑えておきたい変換反応だと思います。